谷川岳から蓬峠 ●●●★★❖
山の歴史と概要
谷川岳というと、ちょっと山の知識のある人に言わせると、「ああ、よく人が死ぬ山だな」という答えが返ってくる。「魔の山」...左様、東面には、マチガ沢、一ノ倉沢、幽ノ沢など、人を拒絶するがごとき岩壁、岩稜群に守られ、さらに冬期はすさまじい豪雪と極低温下の世界となる。さらには、四季折々、山もやや、ガスに囲まれて、晴天に日は少ない。そして今まで何人の人々がこの山に眠ったことpであろうか。山麓に建てられた遭難者慰霊碑の広場の前に立つと、数多くの楽人の無言の語らいが聞こえて来るようだ。
谷川岳は、日本海と太平洋のちょうど中間点に存在し、両方の異質な気流が上空でぶつかり、天気が悪い日が多い。「トンネルを出れるとそこは雪国であった」との書き出しで始まる川端康成の「雪国」」という小説は有名だが、このトンネルは谷川岳を貫いている清水トンネルである。山の両側では、それほど天候が異なる。
山域を大きな視野でみると、三国峠、平標山から谷川岳へと続く、途中に仙ノ倉山という最高峰を含めて、東に延びた稜線は、谷川岳で南北に別れ、北は一ノ倉岳、蓬峠、清水峠を経て巻機山へと続く。南は、天神峠から吾妻耶山へと標高を落とす。さらにジャンクションピークから南へ派生する山稜上には、朝日岳、笠ヶ岳、白毛門と温和な山を作る。
この山の歴史は、当面岩壁の初登攀争いと、遭難の歴史と言って良く、初登攀はともかく、遭難の歴史は今もなお刻み続けている。この日も滑落者が出たそうで、それを知ったのは下界で僕たちを案じてくれた友人の一人から聞いたものだった。
秋の、俗に言う「日本晴れ」とか、「小春日和」とかは、移動性高気圧によることが多い。この日は、東西に広い高圧帯の中に日本列島がすっぽり収まり、晴天の少ない谷川岳に絶好の天気が訪れた。アリューシャン南海には台風から変化した低気圧があり、一方、日本海には移動性高気圧が勢力を張っている。 日本は、広い帯状高気圧に覆われている。ここ2日程度は晴天が続く見込み。谷川岳においても、少ない晴天を得るチャンスが得られるチャンスかもしれない。 山行中の天気概況は、昼頃、風が一時強くなったが、予想通り晴天であった。行動にも支障なく、良い山行ができたと思う。 全体的に危険な所は少ない。ポイントは、西黒尾根の憬節小屋跡から肩の小屋の間と。谷川岳オキの耳から一ノ倉岳。前者は、所々ガレ場の落石を注意することと、氷河の跡のV字状クラックを北側からトラバースする点。後者では、一ノ倉沢が絶壁で、滑落、落石に注意。しかし、岩場もほとんどなく、ルートそのものは易しい。巖剛新道を夜間に登る時は、少しわかりにくい箇所がある。その点については、前期の詳細ルートを参照のいこと。西黒尾根のラクダの背のクサリ場も難しくはない。蓬峠から土樽駅の下り道は、長く足が痛む思いだったが、黒金沢出合まで車道が来ている。 快晴 上野駅(23:20)⇒上越線、急行佐渡7号、¥1,900[¥700])⇒水上駅(2:19, 2:38)⇒(上越51線)⇒土合駅(2:49, 3:05)→ロープウェイ駅(3:26, 3:31)→[0:05]→西黒尾根登山口→[0:20]→巖剛新道入口(3:55)→[2:00]→憬雪小屋跡(6:07,6:20)→[1:30]→谷川岳肩ノ小屋(7:43 スポンサーサイト 谷川岳へ行くことを友人の一人に話すと、話のはずみで同行することとになった。彼の愛称は金太。上野駅で顔を合わせて最終の急行列車に乗る。王寺駅の駅前で買ったタコ焼きの包みを開くと、腹をすかしたかれがたちどころに平らげ、さらに駅弁をほおばる食欲には関心した。二人とも昼寝をしてくる約束ではあったが、忠実には実行していない。列車内で寝ようと思っても、山へとはやる気持ちが、どうしても熟睡を妨げる。 左はトマの耳、右はオキの耳だ。間もなく夜が明ける。[5:40 西黒尾根小支稜] [5:40 西黒尾根小支稜] 西黒尾根の核心部。急登が続く。[6:10 憬雪小屋跡] おおらかで、気品高い山々だ。3年前は雨にたたられて登ったが、今となっては楽しい思い出の一つ。[6:10 憬雪小屋跡] [7:50 肩ノ広場] 僕の課題の一つ[7:50 肩ノ広場] 2度目の登頂万歳![7:50 肩ノ広場] 目と鼻の先だ。[8:50 谷川岳トマの耳] 大源太山も、何か人を引き付ける魅力を感じる山だ。[9:15 谷川岳オキの耳] [9:15 谷川岳オキの耳] 茂倉岳(右)は、本山行の最高点。[9:15 谷川岳オキの耳] [9:15 谷川岳オキの耳] 一ノ倉沢の岩壁がものすごい。それにしても、万太郎沢側のスロークといい、美しい山だ。[10:15 一ノ倉岳] 地図を片手に、ようやくついたわい、といった感じ。[10:15 一ノ倉岳] [11:00 茂倉岳] [11:00 茂倉岳] [11:00 茂倉岳] 青空と、色とりどりの紅葉と、頭上に聳える秋の山[12:30 笹平] [12:30 笹平] お疲れ様。最後の山頂に到着です。[13:00 武能岳] なだらかな草原の中に黄色の屋根が映える。秋の青空の下を、ぶらぶらと歩く楽しさ。山の空気も実にうまい。[13:00 武能岳] スポンサーサイト行程概要
期日
1980年10月5日(日)
日程
前夜発日帰り
行程
9時間35分(20 km)
メンバー
2名
地図
越後湯沢~四万(国土地理院)
交通費用
5,200円
宿泊費用
-
谷川岳~蓬峠MAP
登山高度/距離グラフ
天気概況
天気図からの天候予想
実際の天候状況
コース状態
山行記録
1980年10月5日(日)
天候
コース&タイム
食事
山行日誌
br> 水上駅で普通列車に乗り換えると、そこは登山者専用とも言うべき空間であった。大半の人が土合駅で下車し、僕らもその集団に混ざり、改札口までの長い階段を登る。486段だったが、とにかく地上に着くまで約10分かかる。
土合駅を後にし、車道に沿って踏切を渡り、山の家への道を見送る。間もなく暗がりの中からロープウェイ駅が見える。車道を離れ、階段を登ると、再び車道に出て登山センターの小屋に着く。ここで登山カードを提出する。この先を少し行くと、西黒尾根、巖剛新道と書かれたケルンがあるが、西黒尾根を起点から登る際には、このまま車道を取らなければならないようだ。ここからの細い道は、上で再び車道に出る。おろかにも西黒尾根の起点を見逃した僕らは、やむなく巖剛新道を取るため、車道をつき進んだ。<br.
巖剛新道入口で軽い準備体操をして、登山道を辿る。専攻のオジさんの後ろを歩いて行くうちに沢床を歩いていることに気付いた。このまま行くとマチガ沢の上部に出るのではと思って引き返したが、案の定、道は一度沢の左岸に渡り、再び右岸に戻るように付けられていた。夜道をヘッドライトの光だけを頼りに歩くのは、視界が狭いだけに迷い易いものだ。第3の失策は、さらに登山道を歩いているうちに西黒尾根からの小さい支稜を辿る細いふみ跡に引っ掛かり、正規のルートを外れて強引に西黒尾根まで出てしまったことだ。かなりの急登だったが、ラクダの背の中間部に出て、クサリをからませること2,3か所で、憬節小屋跡(ガレ沢の頭)に出た。
東の空、そう、ちょうど朝日岳の辺りから日が顔をだしている。山のすがすがしい朝だ。高校2年のとき、山仲間と雨に濡れながら縦走したあの山稜が懐かしい。そしてさらにさかのぼることその1年前、この「コースを僕は辿っていたのだ。天気はそのときよりすがすがしい快晴で、その時と同じく、やはり肩ノ小屋までは急登のようだ。それにしても、谷川岳でこんなに晴れるなんて珍しい。同行の彼氏は、自分がお天気男だと強調するのだが...
岩を巻いたり、またいだりして急登w続けると、氷河の跡というところに出る。ルートは右側をトラバースするようになっているが、無謀なリーダーこと、この僕はV字状クラックを直登。このあと少しの登りで、肩の広場に着く。ここで朝食を取り、頂上(トマの耳)に向かう(肩の小屋では、水は得られない)。目と鼻の距離だ。頂上からの眺めのすこぶる良いことはこの上ない。青空の下にゆうゆうとしている巻機山、そして万太郎さんから仙ノ倉山、一ノ倉岳から茂倉岳、朝日岳、白毛門の山並み。西には苗場山、当面には日光の奥白根、再来を期す上州武尊山、尾瀬の至仏山、燧岳、皇海山。そしてはるか富士も顔を出してほほえみかけてくる。その頭には、もう純白のドレスを纏って...
トマの耳からオキの耳へは一投足。頂上より下るとやぐらがあるノゾキと呼ばれる場所に着く。ここから一ノ倉沢岩壁を覗くと、目の回る思いだ。ノゾキから一の倉岳への登り返しは急登で辛いが、そのかわり距離は短い。頂上には避難小屋があり、中芝新道が分岐している。この山稜上の峰はどこも展望は良好で、それぞれ違った感動を呼び起こしてくれる。北面から見る谷川岳の双耳峰は、美しく見惚れてしまった。
一ノ倉岳から少し下ると、草原状の場所に出る。一ノ倉沢の沢の名前を取ったにしては、一ノ倉岳そのものは柔和で大きい。一ノ倉岳から茂倉岳は、穏やかな尾根を辿って行くと、あっという間に着く。茂倉岳山頂も小美禄、行く手に武能岳が鮮やかな紅葉を纏っている。ここは、今回の山行の最高点。山の緑と、紅葉の紅と黄色の装いに囲まれて、思いっきり背伸びしたくなるくらいだ。昼食は、コーヒーとミルクティー。ここが「魔の山」なんて、誰がお乞うことだろう。辺りを見ても容器に笑う草木、山々、青空。そして、草原横になって昼寝をむさぼっている人、パンを口一杯にほおばっている僕達...
茂倉岳を下り、武能岳に取り付くまでの間は、結構長かった。下るときに、足の筋肉がひきつったが、いつものこと...何とかごまかしながら歩く。頂上に着くと、草原の中に帰路胃小屋が見下ろせる。蓬峠は、一面が広大な草原だった。頂上を後にし、快速で飛ばすとヒュッテの前に出る。コーラを買って、一息つくとしよう。峠からは、東に土合駅への道を下り、西に土樽駅への道が下る。ここは、土樽駅方向に下ると、7分程で水場の茶入沢に着く。この後の山腹を巻く道の長いことといったらなかった。おかげで、左右両足2ヶ所ずつ、計4ヶ所にマメを作り、足が痛かった。東俣沢で一休みすると、黒金沢を経て車道に出る。茂倉新道分岐を通過し、舗装道路をしばらく辿ると土樽駅に出る。益に着くと、思い足をほおり出して腰を下ろしてしまった。水上駅で駅弁を買って、それが腹に収まると、赤羽駅までぐっすりと眠った。次は、是非、平標山からの縦走をしたいと思った。
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