startearsの山旅日誌

再び山歩きが出来るようになることを夢見て..

南アルプス 白峰三山縦走 ●●●★★

白根三山とは

標高日本第2位および第4位を誇る北岳間ノ岳、またさらに南に位置する農鳥岳を含めて白根三山と称される。三山のうち、最高峰の北岳は、別名甲斐ヶ根とも呼ばれ、甲斐国誌にもその名が記されている。
「この山、本州第一の鉱山にて、西方の鎮なり、国風に詠ずるところの甲斐ヶ根これにして」
とあり、その頂上に日の神を祀ったという記録がある。山高きがゆえに尊からずと言うが、しかし高い山には立派なやまが多い。北岳は、南アルプスの鈍重な山々の中で、高く、また鋭い三角錐を聳え立たせている。また、パットレスとか、八本歯など、アルペン的ムードをも備えている。山の中でも優等生といったところだろう。だからこそ、その姿を間近に見たときの感慨は深い。

一方、間ノ岳は、その名にに使わず膨大な山で、大和言えどもその頂は甚だ認めにくく、まさに3,000mの高峰をいく座もしたがえる白峰山脈と赤石山脈のジョイント(合流点)にふさわしい。また、雄鳥の形がその山肌に現れることから、農鳥山の山名が果たしてこの山のものではないかとも言われる。農鳥岳のそれは、残雪がその形を表すのに対し、間ノ岳のそれは雪の消えた部分がその形を表す。過去、一大論争もあったと言う。

農鳥岳は、正確に言うと、西農取岳、中農取、本農鳥岳の三峰からなり、やはり農取小屋付近から見ると立派に見える。昔は、別当代とも称されたようである。白根三山のうちでは最も低く、強烈な印象はないが、ここからの展望は捨てがたい。鳳凰三山北岳間ノ岳塩見岳など、各々の山の個性がにじみ出ている。三山縦走のフィナーレにふさわしかろう。

 

行程概要

期日 1978年7月28日(金)~7月30日(日)
日程 前夜発2泊3日 行程
  • 第1日:6時間05分
  • 第2日:9時間25分
  • 第3日:3時間10分
メンバー 単独
地図 北岳国土地理院
交通費用 4,600円 宿泊費用 2,600円(北岳稜線小屋 1,300円、大門沢小屋 1,300円)

参考資料(バス時間)

下記は当時のMEMOです。こちらが現在の交通機関の情報となります。

甲府駅⇒広河原 奈良田⇒身延駅

6:00⇒

10:40⇒

11:10⇒13:09

13:40⇒15:39

15:40⇒17:39

16:55⇒18:54

     アクセス

JR甲府駅から白根三山の表登山口の広河原までは、以下のサイトで丁寧に紹介されています。なお、広河原へは、夜叉神峠から先、山梨県南アルプスイカー規制があるため、夏季~秋季の間はマイカー通行止めとなります。マイカーの場合、夜叉神峠の手前の芦安駐車場を利用し、そこから山梨交通の路線バスに乗り換えて広河原に向かう必要があります。奈良田方面からは、奈良田駐車場からバスを利用して広河原に入る必要があります。マイカーで白根三山縦走の場合には、奈良田駐車場を利用すると便利ですね。

白根三山アクセスMAP

白根三山アクセスMAP

白根三山MAP

南アルプス 白根三山MAP

南アルプス 白根三山MAP

北岳MAP(国土地理院)

北岳MAP(国土地理院

 

間ノ岳MAP(国土地理院)

間ノ岳MAP(国土地理院

農鳥岳MAP(国土地理院)

農鳥岳MAP(国土地理院

 

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山行日誌

1978年7月28日(金)

天候

快晴、午後からガスが出て雷鳴あり

コース&タイム

新宿駅(0:30)⇒(中央東線、急行アルプス54号、?1,700(?500))⇒甲府駅(3:20, 4:00)⇒(山梨交通バス(?1,200(荷台 ?200)))⇒広河原(5:35, 5:40)→[2:30]→大樺沢二股(8:10)→[2:00]→八本歯のコル(12:00, 12:20)→昼食[0:30]→北岳山荘トラバース道分岐(13:20)→北岳稜線小屋(14:05)

食事

  • 朝:パン、みかん缶詰、スープ
  • 昼:ビスケット、焼肉缶詰、紅茶
  • 夕:カレーライス、福神漬

 

日誌

夏の真っ只中、むさくるしい客車の中でひと眠りすると、もう笹子トンネルを抜け、列車は甲府盆地を走っている。甲府駅のバスターミナルには、広河原から南アルプスを目指す老若男女、あらゆる階層の人々がひしめき合い、午後4時発のバスは4台をもってして、夜叉神峠へのカーブを登って行く。峠もそろそろ近づいてきた頃、東の空に朱色の日が出て、思わず寝ていた人も目をこすりながら顔を向ける。夜叉神峠の真下を貫くトンネルを出ると、白根三山の頂部が白く光っている。窓から吹き込む風は涼しく、段々と目が冴えてくる。
広河原バスターミナルでバスを降りると、朝飯を食う暇も惜しくさっそく野呂川にかかる吊り橋を渡る。物珍しい吊橋にとまどいを感じながら恐る恐る足を運ぶと、リズムがつき橋も揺れる。船に乗る心地で、渡り終えて普通の地面を歩くと、軽い酔いを感じる。広河原小屋の手前の坂道を登り、いくつかの堰堤を見下ろす。春先は、雪崩や落石がひどいらしい。山腹のトラバースは続き、右手に御池小屋への道を分ける。やがて土砂崩れの跡を2ヶ所ほど過ぎると、河原沿いの道となる。上には残雪が続き、パットレスを露わにした北岳がなおも高い。沢の水を手で救い上げると、摂氏零度の水は、手を麻痺させ、それを飲むと口腔、食道、胃とそのほてった内臓の熱をどんどん吸収していく。大樺沢二股から上は雪渓歩きが楽しめ、時間に余裕さえあれば、ジュースや果実の缶詰を冷やして飲食する贅沢ができる。パットレスを右手に望むようになると、やがて上部二股となり、かなり急な尾根に取りつく。重い荷物と、うまい水の飲みすぎですっかり体調が狂わせられたおかげで、あと30分という登りに1時間以上を費やして八本歯のコルにたどり着いた。しばしの大休止の途中で「クルマユリが咲いている」といった声を耳にしたり、コル直下では、ミヤマキンバイの黄色い花の群生地を見つけたりで、疲れた身体でも精神的には安らかであった。
ここからは八本歯の険が続き、いくつかの願法を梯子を頼りに登る。すると、山岳レインジャーの人が、道端に転がっている缶をビニル袋に入れ、小屋まで運んでくれるよう呼び掛けてくる。まあ、自分らの同志のやった悪態だから、及ばずながら一袋ザックに詰めて担ぎ上げた。と、そろそろ午後のガスで視界が閉ざされ、北岳登山は明日にするかという気持ちが脳裏をかすめている矢先、ゴロゴロとありがたくない音が聞こえてきた。つづけてもう一発鳴ると、「こりゃ来るぞ!」とレインジャーの人が叫び、稜線小屋へのトラバース道へ急ぎ足で登り、早々に山頂を放棄して小屋へと向かった。分岐で腰を下ろしていた人もザックを背負い、一隊となって小屋へと行進するのははたで見るといささか滑稽な印象だが...しかし、その道の横の岩の下に、ミヤマオダマキの紫色の花びらは見逃さなかった。北岳稜線小屋に着くと、いつしか青空も見え始め、山小屋の人のグチを傍らで聞きながら、へたばった足をもみほぐしていた。

写真集

野呂川吊橋

野呂川吊橋

揺れるつり橋、まるで船に乗っているようだ。渡り終えても軽い酔いを感じた。さあ、南アルプスへの第一歩である。

大樺沢

大樺沢

紺碧の青空、緑の山々、白い雲、薄汚れた残雪。そこは、「南アルプス」のニュアンスを醸し出す。

大樺沢より北岳

大樺沢より北岳

さあ、まだ相当ありそうだ。冷たい水で喉を潤わして、再び腰を上げた。

八本歯のコルより八本歯の険

八本歯のコルより八本歯の険

八本歯のコルにやっとでたどり着くと、そこには八本歯の険が待ち構えていた。昼食を済ませると、少しガスが湧いてきた。

八本歯の険にて

八本歯の険にて

南アルプス森林限界が高い。はいまつも良く成長しているようだ。

北岳山荘稜線小屋から北岳
北岳山荘稜線小屋から北岳
北岳山荘稜線小屋から北岳

明日の登頂を目指して、北岳を見る目もひとしお熱い。山はなかなかその頂を譲らなかった。頂上直下約200mで雷鳴が轟き、頂上をあきらめてしげしげと稜線小屋へと逃げ込んだ。

北岳山荘稜線小屋から富士山
北岳山荘稜線小屋から富士山
北岳山荘稜線小屋から富士山

 乱層雲の上に富士がぽっかり頭を出した。そのあまりにも思いがげなさに、思わず笑いが吹き出てしまった。ボーン、ボーンと時折、雷鳴が轟き、東の空の雲が次々と頭をもたげた。

1978年7月29日(土)

天候

快晴

コース&タイム

北岳山荘稜線小屋(3:30)→[1:00]→吊尾根分岐(4:30)→[0:15]→北岳(4:55, 5:15)→[0:10]→吊尾根分岐(5:30)→北岳山荘稜線小屋(6:00, 6:35)→[1:40]→中白根(7:20, 7:25)→間ノ岳(8:40, 9:05)→[1:00]→農取小屋(10:05, 10:25)→[1:00]→西農鳥岳(12:00, 12:25)→[0:40]→農鳥岳(13:15, 13:35)→[0:40]→大門沢下降点(14:10, 14:20)→[2:30]→本沢出合(16:00, 16:30)→大門沢小屋(17:10)

食事

  • 朝:サバ缶詰、みそ汁、ご飯、福神漬、紅茶
  • 昼:棒パン、みつ豆缶詰、紅茶
  • 夕:鳥釜めし、みそ汁、紅茶

 

日誌

翌日、星がゴミのようにちらばる中を飛び出し、北岳山頂へと向かう。お日様と競争したつもりだったが、あられ15分かそこらの違いで敗北した。しかし、空は快晴である。展望?山の名を一つ一つ挙げると、どのくらいになるか。幸い、その知識が少ないから、知っているものだけを挙げてみようか。槍ヶ岳穂高だけ、焼岳、乗鞍岳木曽駒ヶ岳空木岳、南駒ヶ岳、御岳山、恵那山、鳳凰三山八ヶ岳仙丈岳甲斐駒ケ岳間ノ岳農鳥岳塩見岳...おまけに富士山と。
北岳頂上を去って、北岳山荘稜線小屋に戻り、再び重荷を担いで間ノ岳に向かう。展望は良いものの、どうしてどうして中白根への登りに息を切らし、いくつかの岩峰を巻いて、間ノ岳に着く。間ノ岳の頂上は、まったく広い頂部で、まずキャッチボール程度はできるのではないかと思うくらい。白峰沢源頭wp横切って、しばし石ころの道を駆け降りると、赤い屋根が近づいてくる。農取小屋でファンタを買って飲み干すと、再び急な登りに着く。もうヘトヘトで、西農取へは通常の倍の時間をかけて登った。やっとで遅い昼飯にありついた。そこからの北岳間ノ岳は面白いコントラストを描き、反対側に塩見岳が一人鎮座している。農取岳へは、途中岩稜のトラバースがあって、ちょっとやなところだ。鞍部からしばらく登ると、ようやく農鳥岳山頂だ。ハア、疲れたと思いながら、最後のお別れを彼らに述べなければならぬ。悲しいかな、時間も迫っていてゆっくりでkず、山頂を辞した。
大門沢下降点までは二十山稜となり、道が日本ある。そこから大門沢へのツルベ落としのデングリ返しの泣き坂とも形容したくなるよう急坂は、非常につらいWORKを足に強いられる。胃がそろそろ逆さまになると思う頃、沢に出て水にありついた。そこからは比較的楽な道が大門沢小屋まで続いたが、疲れた身体にはちっとも楽ではなかった。ああ、明日はもう下るだけ...Take my time!

写真集

北岳山頂付近よりご来光

北岳山頂付近よりご来光

日が昇った。南アルプスの一日が始まる。そして、素晴らしい晴天の恵みと、限りない喜びを与えてくれたことに感謝する。

北岳山頂付近よりご来光

北岳山頂付近よりご来光

鳳凰三山がモルゲンロードに輝く。そして僕の顔も紅潮していた。

北岳山頂を望む

北岳山頂を望む

北岳頂上まであと目と鼻の先。一歩、一歩じっくり踏みしめて登って行く。

北岳直下から富士山
北岳直下から富士山
北岳直下から富士山

目の前をかすめる赤く染まったガスの向こうには、富士山が孤立している。実に美しい姿だ。今、まさにその頂に次ぐ山の真下にいることになる。

北岳直下から間ノ岳

北岳直下から間ノ岳

巨大なマッスを持った間ノ岳が鎮座している。山のね張りといい、その重厚さといい、北アルプス中央アルプスとは違った装いを見せてくれる。

南アルプス北岳山頂登頂!

南アルプス北岳山頂登頂!

せっかくだから、北岳山頂で記念写真を撮ってみた。

北岳頂上より甲斐駒ヶ岳

北岳頂上より甲斐駒ヶ岳

甲斐駒ヶ岳がかわいく見えたのも、標高がここより低いせいだろう。そして、その奥に美しい裾野を持つ八ヶ岳がこちらに向かって挨拶していた。

北岳頂上より間ノ岳

北岳頂上より間ノ岳

頂上で飲む水はうまかった。間ノ岳へもそう楽ではなさそうだ。

北岳頂上より仙丈岳

北岳頂上より仙丈岳

正面に大仙丈、小仙丈のカールをかかえた仙丈ケ岳が見える。この山へは、大仙丈沢を遡行して登ってみたいものだ。

北岳頂上からのパノラマ

北岳頂上からのパノラマ

俗名、馬鹿尾根と呼ばれる尾根。

稜線上から中央アルプス

稜線上から中央アルプス

ものすごく景色が良いのに満足だったが、ここでは中央アルプスに魅せられてしまった。まだまだ登るべき山はたくさんある。

中白根から北岳

中白根から北岳

やはり北岳は立派な山だ。登る前と登った後で見た違いは、安心感にひたれる点だ。「あれを登ったなあ、良かったなあ..」と、ひたすらそう思うのみである。

中白根から間ノ岳

中白根から間ノ岳

間ノ岳も近くなった。もう一息だ。

間ノ岳山頂から甲斐駒ヶ岳

間ノ岳山頂から甲斐駒ヶ岳

南アルプスの険峰、甲斐駒ケ岳。体力も朱雀したし、生命保険にでも入ってから登るか...

間ノ岳から北岳

間ノ岳から北岳

間ノ岳から北岳を振り返る。あちらは日本第2位の高峰、そしてこちらは第4位の高峰となる。

間ノ岳から富士山

間ノ岳から富士山

そして、フィナーレはやはりこの山。山々に別れを告げて、さらに遠い道を歩んでいく。
 

1978年7月30日(日)

天候

快晴

コース&タイム

大門沢小屋(6:35)→[2:30]→発電所(9:45)→[0:40]→奈良田バス停(10:15, 11:20)→(マイクロバス、?2,000]→甲府駅(13:15, 15:00)⇒(急行たてしな51号、?1,700、[?500])⇒新宿(17:22)

食事

  • 朝:鳥釜めし、スープ、コーヒー
  • 昼:甲府駅の某食堂にて、ラーメン250円、親子丼400円

 

日誌

さてさて、いよいよ下山日。山小屋のオヤジに別れを告げて、大門沢沿いに下る。八丁坂を下り、河原に降りるともう平坦な道となり、所々の源水を賞味しながら行く。いくつかの吊橋を渡って貯水池を過ぎ、樹林間の登降をしばし繰り返して正面の山が間近になると、もう広河内橋の真上。バスとの時間差で河原に降りて、手足、顔の汗をぬぐって過ごす。ああ、もう里に下りたと思うと寂しい。しかし、奈良田湖のほとりでビールの一缶をあけると、ほのかに山欲が食欲に変わってきた。甲府駅では、ラーメンと親子丼を平らげて、むさくるしい客車の中でひと眠りすると、もう列車は八王子駅を過ぎ、都会を突っ走っていた。

写真集

感想と反省

体力の衰えを痛感する山行だった。それでけに、少々欲張って塩見岳まで行く当初の計画には閉口するが、水の飲みすぎも誘引の一つ。何よりも精神力がなかったことだろう。続いて、登山靴がうまくフィットしてなくって、マメを作ったのもまた一つの理由。やはり日頃のトレーニングは欠かせない。高所障害もあったと思われた。

持参した装備

アタックザック ×1 ショートソックス ×1 背負子×1 行動食 ×1
軍手×3 カッターシャツ×1 シュラーフ×1 食料8食分×1
ポンチョ×1 ニッカズボン×1 裁縫セット×1 ビニル袋×1
カートリッジ予備×1 goro登山靴×1 ライター×2 メンツ
ガスコンロ×1 コンパス×1 固形燃料(中)×1 身分証明書
つば付帽子×1 ヘッドライト1 コッフェル×1 費用・予備費×1
セパレート雨具×1 予備電池 靴紐予備×1 救急具×1
ウインドヤッケ×1 武器(スプーン・フォーク) 地図×1 固形燃料×1
ポンチョ×1 マット 時計×1 ビニル風呂敷×1
タオル×2 ポリタン2L カメラ×1 セーター×2
七徳セット×2 フイルム×2 コンパス×1 キジペ×1
ボールペン×1 ニッカホース×2 細引(6mm×10m)×1 非常食(5食分)×11

●は使用した装備

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