startearsの山旅日誌

再び山歩きが出来るようになることを夢見て..

富士山・御坂山塊 落石を受けて九死に一生だった御坂主脈縦走 ●●●★★★❖❖

御坂峠とは

御坂峠は、富士吉田側と甲府盆地側にまたがる御坂山地の御坂山(1596 m)と黒岳 (1,793 m) との中間付近に所在する (1,520 m) 。御坂隧道開通まで、富士吉田側と甲府盆地側の行き来は徒歩により御坂峠を越えなければならなかった。作家の井伏鱒二太宰治は御坂隧道の富士河口湖町側入口横にある天下茶屋に滞在して執筆活動をしている。(Wikipediaより)

行程概要

期日 1977年4月1日(金)~1977年4月2日(土)
日程 午後発1泊2日 行程 ?
メンバー 単独
地図 御坂山塊黒岳(国土地理院)
交通費用 3,350円 宿泊費用 0円

参考資料(バス時間)

下記は当時のMEMOです。こちらが現在の交通機関の情報となります。

長浜⇒河口湖 河口湖⇒裏三ツ峠

12:00⇒

13:15⇒

14:50⇒

15:55⇒

17:15⇒

18:40⇒

9:35⇒

      

アクセス

●バス:

MAP/ルート図

御坂主脈縦走路

御坂主脈縦走路

御坂山塊黒岳

御坂山塊黒岳

十二ヶ岳

十二ヶ岳

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山行記録

1977年4月1日(金)

天候

晴れのち曇り

コース&タイム

新宿駅(13:16)⇒(中央線急行、¥680[¥400])⇒大月駅(14:38, 14:45)⇒(富士急行線、¥480)⇒河口湖駅(15:44, 16:13)⇒(バス、¥210(¥110))⇒三ツ峠入口→旧御坂峠(17:55)

食事

  • 夕:カレーライス、ポタージュスープ

山行日誌

午前9時の気象通報を聞いて、あわててザックに荷を入れた。今日、明日は晴れるだろう。新宿を急行で出発し、大月で乗り換え、一路河口湖駅へ。駅から甲府駅行きのバスで三ツ峠入口で降りた。トンネルの前を渡って、指導票に従って旧御坂峠に向かう。峠道であるだけに、道は踏まれて歩きよい。道がつづら折りになって、いよいよ御坂峠に近づいたと思う頃、雪で白く染まった富士の峰がすざまじい迫力で僕を刺激した。足元には河口湖が見える。道は右に大きく回って、御坂城跡のある峠に着いた。あたりはもう薄暗い。水場への道を辿ると、左手に幕営好適地が見つかった。今日はここに天幕を張って泊まることにしよう。水場へは3分も下ったところにある。テントを張るのに30分もかかる。荷を中に入れて、夕食にする。辺りは静かで、御坂茶屋も締まっている。向こうには、甲府盆地の夜景が望める。

1977年4月2日(土)

天候

晴れ

コース&タイム

旧御坂峠(5:20)→黒岳(6:10, 6:25)→すずらん峠(6:45)→破風山(6:55)→新道峠(7:15, 7:25)→節三郎岳(7:50)→大石峠(8:45, 8:55)→金堀山(9:35)→節刀ヶ岳(10:30, 10:45)→金山(10:55)→十二ヶ岳(12:05, 12:20)→毛無山(14:10, 14:15)→長浜(15:20, 15:55)⇒(バス)⇒河口湖⇒(中央線、急行)⇒新宿

食事

  • 朝:カレーライス
  • 昼:パン、みかんの缶詰

山行日誌

昨夜は冷え込んだ。おまけになかなか眠れなかった。腰が冷えてカイロを入れたほどだ。早朝3時に目が覚めた。3時30分頃、シュラーフに入って飯を食った。天には星がばらまかれていて、風もそれほどない。予期した通り快晴だ。モルゲンロードの富士の姿が美しい。三ツ峠の左には、朱を帯びた朝日が顔を出す。さあ、一日の始まりだ。

ザックを背負い黒岳に向かう。朝の冷たい空気が好ましい。霜で凍った道を行く。所々まだ残雪が見られる。黒岳避難小屋(ブリキで出来ていて、壁には穴が開いているが、雨宿りくらいにはなりそうだ)が見えると、もう山頂へはチョイチョイだ。山頂にはやぐらがあって、その下には一等三角点が置かれている。南へは大石、北へは釈迦ヶ岳への道があるが、あまり踏まれてなさそうだ。やぐらの上(こわくて一番上までは行けなかったが)に登ると、南アルプスの山々が連なっている。富士山も大きく、その湖も見える。

さあ、西人向かおう。すずらん峠へと下る。それから破風への登りだ。破風は大きく司会が広まって、芝が「さあ、ゆっくり寝て行きなさい。今日は、新道峠から下ると良いじゃござんせんか」とばかりに、良い休憩所を与えてくれる。大体、こういう展望のきく大きなカヤト原を持つ山は、協力的でやさしく、女性的な感じを与える。大菩薩峠がそんな感じだが、今は女性的とは言えず、やさしくヤング向きの山となっている。破風から新道峠(見返峠)へと下って、また節三郎岳へと登り返す。同じようなピークがいくるかあって、どれがそれかわかりにくい。岩塊の細道を適当に乗越て、やがて芝にしきつめられた大石峠に着く。そろそろ疲れを感じてきた。ここからも南アルプスや富士山が良く望め、特にキラキラ光る眼下の河口湖が美しい。水は得られないが、ここも幕営地として良さそうだ。

さて、今日の行程で一番苦しい、節刀ヶ岳への登りが待っている。ピーク2つを乗り越えて。南面がガレ停る金堀山に着く。節刀ヶ岳へは、小枝やササヤブがうるさい。しかし、道ははっきり踏まれていて、わかりにくくはない西側が開けて、道がTの字になった分岐にザックを降ろして、節刀ヶ岳へのさんぁぅ店のピークに向かう。頂上からの展望は良い。向こう側には、鬼が岳も見える。ここらでバテて水を飲む。天幕を含む重いザックで思いやられる。

金山から尾根は二つに分かれる。ここは、十二がたけへと向かう。ここから岩の登降が始まる。尾根はやせてスリルがある。疲れていて足もふらつき、この重荷で予想以上の苦労を強いられた。十二ヶ岳目前のピークで疲れて腰を下ろしてしまった。足も時々つってしまう。岩を装った山は、普通我々に対して挑戦的で、威圧的でかつ男性的である。尾根を忠実に辿ってやっとで十二ヶ岳頂上に出た。一休みして、ノコギリ尾根と呼ばれるヤセ尾根を毛無山へ向かう。しばらくするとキレットへの下りだ。
急な下降で、鎖は付けられているが、かなりガレている。鎖の下降中の時だ。上の方でいきなりガランと音がして、その音が近づいて来るのがわかった。落石!!、その石は、コースに沿って落ちてきた。恐ろしいとも思わなかった。そして、頭上の岩で音がしたと思ったら、左肩の下部に当たって下へ落ちて行った。痛みを堪えながら降りると、それは幅10cm、縦30cm、横平均40cmくらいの大径型の平たい岩石だった。落石を受けた後に、あらためて恐ろしくなった。運が良かったのだ。落石を受けた時、身体は右半分、落石落下コースから外れていて、しかもいわばから身体が離れていなかったおかげでダメージも少なくてすんだ。もう少し、身体が左によって岩から身体が離れていたら、東部を直撃されていたことだろう。落石の際は、岩から身体をぴったりと寄せることだ。顔を上げて、どこから落ちてくるかなどと見ては危険だ。また、肩をやられていたら、鎖骨骨折していたかもしれない。岩が小さくとも、落下加速を伴った威力は倍化する。シャツを脱いで落石を受けた部分を見ると、青紫に内出血していた。

キレットには4本の丸太で組まれた橋がかけられている。上には錆びた針金が張ってある。足を降ろすと丸太が不気味にしなる。大きさも不均一で、外の2本が太く、中の2本が細く、そしてたがいに針金で結ばれている。恐る恐るこれを渡り切ると、再び急登に着く。しかし、ここを過ぎるとこれといった難所はもうない。二つ山えおこし、ところどころの露岩を乗り越え、4つのピークを過ぎると毛無山に着くが、それまでが大変だった。主にとアップダウンの繰り返し、キレット通過や落石の緊張感で、疲労が激しく、最初で最後のパーティと声を交わすとほっとしたものだ。これまで、何度荷物を投げ出してから身で降りようとおもったことか。何度、ここらでもう一泊しようと思ったことか。露岩の登降などは、最後には膝まで使って苦労した。道が緩やかになって、やっとで毛無山に着く。指導票はひっくり返されていて、念のため磁石で道を確かめる。ここからの展望は良い。富士山の雪面が光っている。眼下には河口湖、西湖も望め、振り返ると延々とした御坂山塊主脈が続いている。あれを一日で歩きとおしたと満足感とともに、予想外の体力の消耗を反省した。無謀だったと言われても仕方がないかもしれない。ほぼ持っている体力を使い果たした。

毛無山から直接降りて、分岐を長浜への道を選択した。右下に長浜の部落が見えてくる。足はくつずれが3ヶ所でき、途中何回か休んだし、沢に降りては水を飲み顔を洗った。首を手で触ると白い粉がつく。堰堤を3つ過ぎる。3つ目は、階段を乗り越してまた降りる。そこからは、真っすぐに降り、道路に突き当たり左に少し行くとバス停に出た。意外に早く下った余力にはあきれたが、身体のあちらこちらの筋肉がつる所を見るとやはり限界だったのだろう。力の限界で山をし、しかも落石による不名誉な負傷を受けたとなると、今回ばかりは後味の悪い結果となった。しかし、こうして無事下山できて本当に良かったと思う。

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御坂峠道の登りから見た富士山

御坂峠道の登りから見た富士山

三ツ峠山から帰って、御坂山塊を知った。さっそく2か月後には、一人で天幕を持って、重いキスリングを背負って御坂峠へと向かった。つづら折りの峠道から後ろを振り返ると、富士が姿を見せてきた。

富士山...いったいこの俗物は何を考えているのか

富士山...いったいこの俗物は何を考えているのか
御坂峠頂上。今夜は一人でこの峠上で過ごさなければならない。
御坂峠頂上。今夜は一人でこの峠上で過ごさなければならない。
御坂峠頂上。今夜は一人でこの峠上で過ごさなければならない。

茶屋も締まっており、峠はひっそりと静まり返っている。

初めての単独幕営山行

初めての単独幕営山行

天幕の下には霜柱が張り、異常な冷たさが体に伝わってくる。行き合わせる人は誰もいなく、風が木々をゆする音だけが聞こえてくる。<br>

明日の長い行程を前にして眠るように努めたが、寒さと心細さによって思うように眠れなかった。「あしびきの、長々し夜を独りかも寝む」

静かな夜。蝋燭の炎が、せめてもの僕の心を安らかにしてくれる。

夜明けの御坂峠
夜明けの御坂峠
夜明けの御坂峠

さあ、夜明けだ。長かった夜も終わり、ほっとする。三ツ峠の方の空がにわかに明るくなってきた。日の出...さあ、一日の始まりだ。ザックに荷をつめ、身体に気合いを入れる。

モルゲンロードに染まる富士山

モルゲンロードに染まる富士山

富士...俗物でもやはり日本を代表する山であることは疑いない。

「富士には月見草がよく似合ふ」

黒岳(1,792m)山頂

黒岳(1,792m)山頂

御坂山塊の最高峰である黒岳。御坂峠から1時間程の登りで最初のピークに達した。黒岳頂上は、霜で白く染まっていた。

黒岳山頂から見た富士山

黒岳山頂から見た富士山

黒岳山頂には測量やぐらがあるが、そこに登るのも一苦労だった。

南アルプス連峰

南アルプス連峰

黒岳を振り返る

黒岳を振り返る

まだ沢筋には残雪があった。

釈迦が岳

釈迦が岳

御坂主脈から外れた釈迦が岳が対座している。

破風のカヤトからの河口湖

破風のカヤトからの河口湖

縦走路中から南アルプス連峰のパノラマ

縦走路中から南アルプス連峰のパノラマ

低山では春を迎えようというのに、まだ豊富な残雪が見られる。

節刀ヶ岳、この山塊の第2の高さを誇る

節刀ヶ岳、この山塊の第2の高さを誇る

この登りは、つらく苦しかった。

十二ヶ岳
十二ヶ岳
十二ヶ岳

いよいよ難関の十二ヶ岳の山容が見えてきた。ピークとピークの間はするどく切れ込んでいて、キレットをなしている。

節刀ヶ岳頂上から最後の南アルプスの眺めに別れを告げる

節刀ヶ岳頂上から最後の南アルプスの眺めに別れを告げる

十二ヶ岳頂上から富士山を望む

十二ヶ岳頂上から富士山を望む

岩場を超え、やっとの思いで十二ヶ岳頂上に立った。しかし、本当の難所はこれからだった。

十二ヶ岳キレット

十二ヶ岳キレット

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